モンゴルにおけるコロナウイルス感染拡大防止法等の成立・施行:個人及び法人の義務並びに罰則規定

2020/5/19
 4月29日(水),モンゴル政府はコロナウイルス感染拡大防止法(注)を成立させるとともに,モンゴル国違反法などの関連法を改正しました。同法は,同日施行されましたが,5月8日(水),政府広報により内容の詳細が判明したため,在留邦人の皆様の生活に大きな影響を及ぼす「個人及び法人の権利・義務の内容並びに罰則規定」に関連する箇所をとりまとめましたので,以下のとおり情報を提供させていただきます。
 
注:コロナウイルス感染拡大防止法
●同法の正式名称は,「コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大予防,対策並びに社会及び経済への悪影響抑制に関する法」ですが,ここでは便宜上,当館で付した通称名「コロナウイルス感染拡大防止法」を使用させていただきます。
●また,同法では,新型コロナウイルス(COVID-19)を単に「コロナウイルス」と表記しているため,当館も同様に表記させていただきました。以下,「コロナウイルス」と記載されている箇所につきましては,「新型コロナウイルス」と読み替えていただきますようお願い申し上げます。
 
1.コロナウイルス感染拡大防止法について
(1)目的(同法第1条)※当館仮訳
この法律は,コロナウイルス(COVID-19)感染拡大(以下,感染拡大という)の予防,対策,社会の健康保護,人権に対する一定の制限,関連する決定の緊急発出,社会及び経済への悪影響の抑制,構成に関し,特別規則による内閣の決定に関連する調整をすることを目的とする。
 
※その他,同法全体の構成を見ると,個人と法人の権利・義務のほか,非常事態発生時に迅速な対応を可能とするため,政府・関係省庁等の役割分担及び権限が整理されております。
 
※同法には一定の人権制限措置が設けられていますが,同法第11条第1項で,人権制限の要件が明記されており,モンゴル国憲法下で保障されている基本的人権を制約する場合は必要最低限でなければならないとされています。
 
(2)有効期間(同法第18条)※当館仮訳
この法律は、2020年12月31日まで有効である。モンゴル国国家大会議は1度だけ6か月までの期間延長をすることができる。
 
(3)個人の権利・義務に関する条文(同法第12条)※当館仮訳
12.1
個人(国民)はコロナウイルス感染予防及び対策に関して下記の権利を有する。
12.1.1.
関係機関及びその職員が実施中の対策,措置に関する正確かつ具体的な情報を得る。
12.1.2.
コロナウイルスに感染した又は感染の疑いがある場合,必要な健康支援,サービスを得る。
12.1.3.
コロナウイルス感染予防,対策のために策定された決定及び対策事項が,本法律第11条第1項の規定を満たさずに権利と自由が侵害されたとみなされた場合には,裁判所に提訴する。
12.1.4.
法によって規定された他の権利
12.2
個人(国民)はコロナウイルス感染予防及び対策に関して下記の義務を有する。
12.2.1.
関係当局の決定事項,検疫,移動及び時間的な規制,手順,規律,警告,勧告及びガイドラインを遵守する。
12.2.2.
個人の健康状況,渡航歴など感染状況調査に必要な情報を正確に提示する。
12.2.3.
当局による行政検査,診察を必ず受ける。
12.2.4.
コロナウイルス感染が疑われる場合,自身を隔離し,医療機関へ緊急通報する。
12.2.5.
公共機関,公的な場所ではマスクを常に着用し,手を洗い,日常生活の衛生要件を満たす。
12.2.6.
コロナウイルス感染時の隔離,観察規律を厳守する。
12.2.7.
コロナウイルス感染が拡大している国からの来訪,又は感染の疑いがある場合は当局が定めた条件と期間に基づいて隔離される。
12.2.8.
帰国,隔離,サービス,滅菌,消毒に関わる費用を支払う。
12.2.9.
当局の決定に違反した場合に生じる費用を負担する。
12.2.10.
法によって規定された他の義務
12.3
コロナウイルス感染予防,対策の障害になる,また社会,経済へ悪影響を及ぼすような国民に誤解を与える虚偽の情報を拡散することを禁止する。
12.4
個人が感染症を意図的に他人に感染させた場合は刑法により罰する。
 
(4)法人の権利・義務(同法第13条)※当館仮訳
13.1
法人はコロナウイルス感染予防及び対策に関して下記の権利を有する。
13.1.1.
コロナウイルス感染予防及び対策に関して,実施中の対策,措置に関する正確かつ具体的な情報を得る。
13.1.2.
コロナウイルス対策として専門機関と協力し,アドバイスを受け,寄付,支援を行う。
13.1.3.
コロナウイルス感染予防,対策のために策定された決定及び対策事項が,本法律第11条第1項の規定を満たさずに権利と法的な立場が侵害されたと見なされた場合,裁判所に提訴する。
13.1.4.
法によって規定された他の権利
13.2
法人はコロナウイルス感染予防及び対策に関して下記の義務を有する。
13.2.1.
関係当局の決定事項,検疫,移動及び時間的な規制,手順,規律,要件,警告,勧告,ガイドラインを遵守する。
13.2.2.
コロナウイルス感染予防及び対策に必要な備品を備蓄する。
13.2.3.
職場を定期的に換気,滅菌,消毒する。
13.2.4.
個人及び従業員への感染を予防するための環境を当局から与えられた指示,勧告に従って整備する。
13.2.5.
検疫,移動規制,隔離を受けている従業員の役職を保持する。
13.2.6.
この法律の7.1.1.で定めた規律によって禁止された形で大衆が直接参加するイベント,会議を開催しない。
13.2.7.
情報技術を使用してオンライン業務を行う機会を創出する。
13.2.8.
災害時に賃貸料の引き上げ,商品,サービスの価格高騰化,意図的な品不足状況を作らない。
13.2.9.
コロナウイルス感染拡大時には高齢者,基礎疾患を有する者,定期的な健康支援やサービスを必要とする者,障害者,妊娠中の者,敏感及び被害を受けやすい者への悪影響を抑え込む。
13.2.10.
法によって規定された他の義務
13.3.
新型コロナウイルス感染予防,対策の障害となる,また社会,経済へ悪影響を及ぼすような国民に誤解を与える虚偽の情報を拡散することを禁止する。
 
2.モンゴル国違反法改正について
(1)法改正の趣旨
コロナウイルス感染拡大防止法案で示された義務規定の違反取締りのため,モンゴル国違反条文の部分的な追加・修正を実施したもので,罰金の増額のほか,違反者を拘束できる権限が盛り込まれるなど,罰則内容が従前より強化されています。
 
(2)第5条第13項 災害防止に関する法律違反(改正条文のみ抜粋:当館仮訳)
13.1
災害,危険現象,感染症,事故,危険時に,このことについて国民に誤解を与える虚偽の情報を拡散したことが刑事責任を問う程ではない場合,個人に500単位(当館注:50万トグログに相当,以下同様)に相当する罰金,法人の場合5,000単位(当館注:500万トグログに相当,以下同様)に相当する罰金を科す。
13.2
災害,危険現象,感染症,事故,危険時に当局が決定した検疫,移動規制及びこれらの規律に違反した,又は障害となったことについて,刑事責任を問う程ではない場合,個人に500単位に相当する罰金,又は7日間から30日間の拘束の罰則を科し,法人の場合5,000単位に相当する罰金を科す。
13.3
災害,危険現象,感染症,事故,危険時には当局が報じた情報,勧告を無償かつ障害なく発信する義務を果たさなかった法人に対し,5,000単位に相当する罰金を科す。
 
(2)第5条第17項 動員に関する法律違反(改正条文のみ抜粋・当館仮訳)
17.1
災害,危険現象,感染症,事故,危険に対する国家安全保障に関わる人材,運送,通信機器,建造物の動員を回避し,又は障害を与えた場合,個人に50単位に相当する罰金,法人の場合500単位に相当する罰金を科す。
 
3.同法の運用方針
以下は,モンゴル警察庁ほか関係当局から確認した内容となります。
(1)原則
●新型コロナウイルス感染拡大防止法に明記されている義務に違反した個人及び法人に対して,違反行為が「故意,悪質」であると認められる場合にはモンゴル国刑法に基づき処罰されます。
●違反行為が,モンゴル政府関係省庁から取得する各種の「許可」に関連する場合,当該許可の取消・撤回を検討されます。
●違反行為が故意,悪質とは認められなくても,当該行為が現場判断により,公共の安全に対して大きな悪影響与えるなど,行為者に「重大な過失がある」と認められる場合には,モンゴル国違反法に基づき処罰されます。
●過失が「重大」と認められない場合には,現場での指導にとどまります。違反行為を認知したからといって,全件,検挙対象となるわけではありません。
 
(2)違反取締りの状況
全体的に違反取締り件数は少なく,大多数の個人及び法人は新型コロナウイルス感染拡大防止に関する規則を遵守している様子がうかがえますが,関係当局に照会した結果,重大かつ悪質な違反行為も認められるため,少数ではあるものの,検挙事例があるようです。
 
【検挙事例】
・フェイクニュースの拡散
・防疫対策違反(インターネットカフェ,バー,ナイトクラブの営業制限違反)
 
3.当館コメント
●本年6月24日にモンゴル国家大会議員総選挙が予定されていますが,報道の論調及び世論調査の結果を見ると,多数のモンゴル国民は現政府が実施する新型コロナウイルス感染症対策を高く評価している様子が見受けられます。
●実際,5月14日時点で,感染者は98名(死者なし)に抑制され,いずれも国外からの輸入症例で,未だ「市中感染」は確認されておりませんので,モンゴル政府の各種規制措置は有効に機能していると考えられます。
●従いまして,モンゴル政府は,現在実施している対策が高い効果を発揮していること,及び多数のモンゴル国民がこれを支持し,違反者には厳しい目が向けられがちであることを背景として,治安当局による指導・取締り活動は,モンゴル政府の法令・指示を遵守している大多数のモンゴル国民及び在留外国人の生活と経済活動に過度の抑制にならないよう配慮しながらも,今後も積極的に行われるものと考えられます。
●在留邦人の皆様におかれましては,このような情勢が背景にあることを再認識していただくとともに,特に事業を営まれている方におかれましては,防疫対策などモンゴル政府の措置についてご不明な点がある場合には,関係当局に照会することをお勧めいたします。
 
4.法律の原文
国家大会議ホームページで公開されておりますので,詳細につきましては,5月8日付けの「政府広報No.17/1119」をご確認願います。
 
http://www.parliament.mn/c/3ado 

 
【問い合わせ窓口】
在モンゴル日本国大使館 領事・警備班
EMBASSY OF JAPAN IN MONGOLIA
C.P.O.Box 1011
Elchingiin gudamj 10,Ulaanbaatar 14210,Mongolia
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