大使からのご挨拶

令和7年2月24日
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 皆様、こんにちは。駐モンゴル日本国特命全権大使の井川原です。
 
 駐モンゴル大使として着任して1年が経ちました。厳しい寒さの冬、嵐の春、見事な緑が織りなす夏、モンゴル産の野菜や果物を楽しむ秋と、モンゴルのダイナミックな自然を体験でき、一層モンゴルを身近に感じることができました。モンゴルの皆様、在留邦人の皆様に温かく迎えていただき、多くの助けをいただきながら、職務に励むことができました。改めて御礼申し上げます。
 
 2025年は、日本とモンゴルの関係が大きく深化する契機の年となります。
まず、モンゴルが民主主義体制に移行して35周年を迎えますが、言い換えれば日本とモンゴルの両国が、民主主義という共通の価値の下で新たな信頼関係を構築し、共に歩んできた歴史も35周年を迎えるということです。日本からの一連の協力は、モンゴルが民主化および自由市場経済化への移行期に直面した深刻な困難を乗り越え、現在の幅広い発展に至る基礎を構築する過程で大きく寄与してきたものとして、多くの皆様から高い評価をいただいています。その信頼を礎として、先日、日本政府は対モンゴル円借款の供与の再開に向けて手続きを進める決定をしました。これにより、チンギスハーン国際空港の拡張をはじめとする諸事業へのさらなる協力が期待されます。両国の先達が築いてきた歴史に感謝し、「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ」を一層強化していく所存です。
 
 また本年は、モンゴルにおける日本語教育が始まってちょうど50年になります。これまで日本語を学んだ方、日本留学経験のある方がモンゴルの政治、経済、文化、学術、保健、スポーツ等さまざまな分野で重要な役割を果たし、モンゴルの発展に貢献していることに驚かされます。近年、我が国は、モンゴル政府が取り組む産業多角化の推進および産業発展を担う人材の育成を支えるため、工学系高等教育の能力強化を通じたエンジニア育成に協力しています。教育は全てのSDGsの達成に欠かせない要素であり、他者や異文化に対する理解と信頼を育み、平和を支える礎ともなります。モンゴルの若者が、祖国および国際社会の発展と安寧の実現のために活躍する姿をこれからも応援していきたいと考えています。
 
 最後に、喜ばしいお知らせがあります。フレルフス大統領をはじめモンゴル国民の皆様からのご招待を受け、天皇皇后両陛下がこの夏にモンゴルをご訪問される方向で調整が進められております。両陛下のご訪問は、モンゴルの皆様から温かく歓迎され、両国関係史において画期的な出来事になると確信しております。皆様のご協力をお願い申し上げます。
 
 私の愛読書である宮本武蔵の『五輪書』には、「千日の稽古をもって鍛(たん)となし、万日の稽古をもって錬(れん)となす」という言葉があります。日本とモンゴルの関係をさらに発展させ、経済、文化、教育、科学技術、安全保障など多岐にわたる分野での協力を推進することは一日にして成るものではありません。日々の小さな努力の積み重ねを怠ることなく、その先にある平和と繁栄の実現のために全力を尽くしてまいります。

 本年が皆様にとって健康で実り多きものになるよう、また、日本とモンゴルの関係がさらに深化するよう、そして世界の平和と安定が確かなものになるよう、心から祈念いたします。
 
令和7(2025)年 ツァガーンサルによせて
                   駐モンゴル特命全権大使  井川原 賢