モンゴル政務週間動向(2008.07.07-07.13)
1.内政
(1)大統領
(イ)7月9日、エンフバヤル大統領は、モンゴル訪問中の李康国韓国憲法裁判所長官と会談した。李康国韓国憲法裁判所長官は、韓国憲法裁判所として、韓国で合法的に労働しているモンゴル人の生活環境の改善を支援するとの意向を表明した。(10日US)
(ロ)7月10日、ミントン在モンゴル米国大使はエンフバヤル大統領を表敬し、ブッシュ米国大統領からの国祭日(ナーダム)に際する祝辞を手交した。ブッシュ大統領からの祝辞には、米国はモンゴルの民主化を評価するとともに、今後も支持していく旨記されていた。(14日ZM、大統領プレスリリース)
(ハ)7月10日、エンフバヤル大統領は、B.バースト文学新聞編集長に国民作家の称号を、S.オヨーンに文化功労者の称号を授与した。その他、芸術功労者、国民教師等の称号を計14名に授与した。また、北極星勲章をチラージャブ・モンゴル作家同盟長ら計6名に授与した。(14日ZM)
(ニ)7月11日、エンフバヤル大統領は、モンゴル建国802周年、人民革命87周年を祝う国祭日(ナーダム)の開会式で開会の辞を述べた。(14日ZM)
(2)首相、内閣
(イ)バヤル首相は、政府を代表し国祭日(ナーダム)の祝辞を発表した。祝辞のなかで、先般起きた騒乱は我々に教訓を与えた、今後国民が協調して二度とこのような状況を繰り返さないことを望むと述べた。(10日TR)
(3)定例閣議(9日開催)
(イ)石油製品の国家備蓄に関連し、2008年7月及び8月に、政府は石油製品卸業のライセンス保有業者と契約し国家備蓄の充実に向け活動を展開していくことが決定された。(10日US)
(ロ)ガソリン及びディーゼル燃料に関し、6月11日から7月15日までの期間の輸入及び売買時の特別税を0%、付加価値税を5%まで減税し、7月15日以降は特別税、関税及び付加価値税を0%とすることが決定された。(10日US)
(4)国家大会議
(イ)会派、委員会の動き
(a)7月10日、ガンスフ国家大会議議員・民主党院内会派会長はルンデージャンツァン国家大会議議長に内閣不信任案を提出した。同不信任案には、6月30日及び7月1日夜、ウランバートル市内で発生したデモ後の騒乱に際し、防止策や対応策を講じることができずに多くの被害者を出したこと、また貴重な文化遺産に被害を及ぼしたことは政府の責任であると述べられている。(14日US)
(ロ)常任委員会
(a)7月7日、法務常任委員会付属の人権小委員会が開催された。同委員会の協議の結果、7月1日の騒乱に関連して人権侵害が行われていないか否かを調査する作業部会及び大統領令による非常事態宣言が法律に反していないかを調査する作業部会を設置することとなった。同小委員会の開催に際し、同小委員会委員であるシャラブドルジ国家大会議議員・法務常任委員会委員長(人民革命党)は、「人権小委員会の開催をつい先刻知った。騒乱に関連して拘束された者の拘束中の人権侵害が協議されるのであれば、警察及び然るべき機関を参加させ、明確な証拠の提示をもって公式な報告を受けて行うべき。」として会議開催の延長を申し出たが受け入れられず、シャラブドルジ国家大会議議員は同小委員会をボイコットした。(8日TR、US)(当館注:同小委員会は5名で構成されており、今回の会議はバトトルガ国家大会議議員(民主党)、バトウール国家大会議議員(民主党)及びバトバータル国家大会議議員(民主党)の参加により開催された。その後、8日及び9日の同小委員会も、人民革命党からの参加はなく、民主党のみの参加で開催された。)
(b)7月8日、人権小委員会が開催され、非常事態宣言中の4日間に行われたモンゴル公共ラジオ・テレビの報道活動が公正なものであったかについて協議された。同テレビ局の幹部や担当者らから、政府幹部或いは警察当局による放送内容の規制があったこと、市民運動党が一部市民に金を渡して騒乱を起こさせたと思わせるような映像が繰り返し流されたこと等が報告された。同小委員会での協議内容は法務常任委員会に提出されることとなった。(9日US)
(c)7月9日、人権小委員会が開催され、非常事態宣言中の業務遂行の過程で人権侵害行為がなかったかどうかについて、アマルボルド警察庁長官代行、バトジャルガル判決執行庁長官らが報告を行った。(10日US、14日UN)
(ハ)本会議
特段の動きなし。
(ニ)国家大会議総選挙(以下「総選挙」)
(a)7月7日、総選挙の不正、再集計等について協議するため、各政党の幹事長による会議が行われた。中央選挙管理委員会委員長の罷免・辞職を求める要請が各政党から出されたが、この件についてオトゴンバヤル人民革命党幹事長は記者会見で、「人民革命党は、中央選挙管理委員会の活動に対して決定権をもつのは各政党ではなく、国家大会議が法律に従って決めることであるという立場をとっている。」と述べた。(8日TR、UN、AE)
(b)第22選挙区(ウランバートル市バヤンズルフ区)で立候補したガンディ国家大会議議員(人民革命党)は、同選挙区で立候補したバトバヤル前ウランバートル市長(人民革命党)を不正な選挙活動を行ったとして裁判所に訴えた。(8日UN)
(c)7月7日、第26選挙区(ウランバートル市ソンギノハイルハン区)で立候補した民主党の4人の立候補者は記者会見で、同選挙区の一部の投票区で人民革命党と国民勇気党による不正が行われたとして再集計を求める陳情を選挙区選挙管理員会に提出したが、同選挙区選挙管理委員会が再集計を行わない決定を出したことを不服とする旨発言した。(8日US、AE)
(d)7月7日、第25選挙区(ウランバートル市バヤンゴル区)で立候補したバヤルトサイハン国家大会議議員(人民革命党)の選挙本部は記者会見を行い、同選挙区の一部投票区において投票結果集計の際に不正があったとして中央選挙管理委員会に陳情を出しており、陳情が受け入れられない場合は裁判所に訴えると発言した。(8日AE)
(e)7月8日、エルベグドルジ民主党党首は記者会見を行い、同日開催された民主党大会で決定された内容について、「(ⅰ)今回の騒乱を防止・収拾できなかった責任を問い内閣の総辞職を求める、(ⅱ)総選挙の不正に関わった中央選挙管理委員会の総辞職を、また国民登録・情報センター及び国境警備庁の幹部の辞職を求める、(ⅲ)報道の自由及び公共放送に関する法律に違反したモンゴル公共ラジオ・テレビの幹部の辞職を求める、(ⅳ)違法な人権侵害行為を行い、職務を遂行しなかったアマルボルド警察庁長官代行及びボルド諜報庁長官の辞職を求める等の要求を出した。」と述べた。更に「これらの要求が受け入れられなかった場合、民主党は新しい国家大会議の活動に参加しない。また、今般の騒乱を首謀した疑いでバトザンダン市民運動党党首及びマグナイ同副党首が拘束されていることに民主党は抗議する。」と発表した。(9日ZM、UN)
(f)7月8日、第24選挙区(チンゲルテイ区)の立候補者、オドンチメド国家大会議議員(人民革命党)、ガンホヤグ食糧・農牧業大臣(国民勇気党)、ツォグトゲレル国民新党幹事長(国民新党)らの法律顧問らが記者会見を行い、同選挙区で立候補したバヤルサイハン氏(民主党)が偽造した申請書類により立候補資格を取得し、また不正な選挙活動を行ったとする見解を発表した。また、これらの法律顧問は、バトトルガ中央選挙管理委員会委員長が選挙法に違反する行為をしたので、上記の3名の立候補者らが署名した陳情書をエンフバヤル大統領に提出した、と発表した。(9日UN)
(g)7月9日、第1選挙区(アルハンガイ県)で立候補したオドバル元保健大臣(人民革命党)は、同選挙区で立候補したラムバー国家大会議議員(民主党)、バトバヤル国家大会議議員(民主党)が不正な選挙活動を行ったので、司法機関に訴える用意があると記者会見で述べた。(10日AE)
(h)7月9日、第7選挙区(ドルノド県)で選挙に不正があったことを理由として、同選挙区選挙管理委員会は再集計を行う決定を出した。同選挙区選挙管理委員会は、(ⅰ)使用された投票用紙、未使用の投票用紙の集計が正しくされていない、(ⅱ)記入済みの投票用紙を密閉して保管する袋53枚(袋1枚につき500枚程の投票用紙が保管可能)の所在が不明になっている、(ⅲ)右問題が解決していないうちに、エンヘー選挙区選挙管理委員会委員長(人民革命党党員)らにより選挙結果の集計表が不正に作成され、中央選挙管理委員会に届けられた等としている。(10日AE)
(i)7月9日、第26選挙区(ウランバートル市ソンギノハイルハン区)で立候補したシャラブドルジ国家大会議議員(人民革命党)ら人民革命党の4人の立候補者は記者会見の席上、民主党から立候補した4人の立候補者が不正な選挙活動を行ったと述べた。(10日ZM、14日UN)
(j)国境警備庁は、総選挙をめぐるエルベグドルジ民主党党首の批判(当館注:外国に移住している6万8千人の国民の名簿を国境警備庁が人民革命党に譲渡し、それが投票時に不正に利用されたというもの。)を否定する旨発表した。(14日UN)
(5)その他
(イ)7月7日、マグナイ市民運動党副党首が騒乱を扇動した疑いにより、刑法第177条、179条及び180条に基づき拘束された。マグナイ市民運動党副党首は、容疑を否認している。(8日UN)
(ロ)7月1日に発生したデモ・暴動による被害状況を調査するため、行政監察庁は3つの作業部会を組織した。各作業部会は、(a)文化財、楽器、衣装、機材等の損害、(b)人民革命党本部の外部、内部及び内装、光熱・上下水設備等の損害、(c)アート・ギャラリー、国立交響楽団、中央文化宮殿の建築物及び 光熱・上下水設備等の損害について、7月15日に調査結果を発表する予定である。(8日UN)
(ハ)ハーン銀行は、騒乱によって受けた文化施設及び被害者の救済のための基金を設立し、7月8日、ピーター・モロー同銀行総裁は第1回目の義捐金として重傷を負った警官及び消防隊員並びにそれらの家族に900万トグログを、首都非常事態局に250万トグログを手交した。また、「文化遺産復興修復基金」の口座をハーン銀行に開設し、ハーン銀行から1億トグログの寄付金を振り込んだ。(9日US)
(ニ)騒乱により馬頭琴交響楽団の所有する楽器の約8割が破壊または略奪されたことに対し、「モンゴル・ニュース・カンパニー」の有志は、1日分当たりの給与を馬頭琴交響楽団に寄付した。(9日UN)
(ホ)フレルスフ国家大会議議員(人民革命党)が貯蓄銀行から収賄した疑いで第一審により有罪判決が出され、上告されていた件で、7月8日、首都裁判所で裁判が行われたところ、無罪判決が出された。(9日MM、US)
(ヘ)7月9日、騒乱を首謀した嫌疑のためウランバートル市内のガンツ・ホダグ拘置所に勾留されているマグナイ市民運動党副党首が、トゥブ県の拘置所に移送された。また、勾留中のバトザンダン市民運動党党首がハンガーストライキをしていると報道されていることに対し、警察当局は事実関係を否定した。(10日UN)
(ト)エルベグドルジ民主党党首が、騒乱後72名の市民が行方不明になっていると発言していることに対し、警察庁は根拠のないことであるとして同党首の発言を否定する発表を行った。(10日UN)
(チ)7月9日、バーサン高齢者同盟会長、オヤンガ政治新聞編集者、ボルド・モンゴルの大地運動代表らは記者会見を行い、バトザンダン市民運動党党首及びマグナイ市民運動党副党首らが今回の騒乱の首謀者として勾留されていることを批判し、直ちに釈放するよう要望した。(10日UN)
(リ)騒乱により人民革命党本部が焼失したことに対し、NIK社、ティタン・インターナショナル社、第76学校等の組織をはじめ、国民から1億トグログを超える寄付金が人民革命党に寄せられた。(10日TR)
2.外交
(1)一般
(イ)コサチェフ・統一ロシア党幹部評議会幹事長代行・ロシア下院国際問題委員会委員長は、オトゴンバヤル人民革命党幹事長と電話会談し、国祭日(ナーダム)の祝辞を伝えるとともに、7月1日にウランバートル市で起きた騒乱に対して遺憾の意を表明した。また、統一ロシア党は総選挙で与党として支持された人民革命党と、今後も協力していきたいとの意向を明らかにした。(14日TR)
(2)要人往来
特段の動き無し。
【AE=日刊紙アルディン・エルフ、US=日刊紙ウドゥリーン・ソニン、UN=日刊紙ウヌードゥル、ZM=日刊紙ゾーニー・メデー、MM=日刊紙モンゴリーン・メデー、TR=人民革命党中央機関紙ウネン】