2006年度第2回安全対策連絡協議会の開催について
11月28日、在モンゴル日本国大使館において、日本人会役員、日系企業関係者、JICA関係者等の参加を得て、2006年度第2回安全対策連絡会議を開催しました。
当国における治安情勢等の報告の後、活発な意見交換が行われました。概要は、以下のとおりです。
1.市橋大使挨拶要旨
7月6日に今年の第1回安全対策連絡協議会を行ない、大使館としても積極的 に犯罪情報等を発信するなどして、邦人の皆様の安全確保に努めて参りました。 しかし、残念ながら、JICAシニアボランティアの川崎さんが10月31日に強 盗殺人事件の犠牲となり、不帰の人となられました。非常に痛ましい出来事であ り、心から川崎さんのご冥福をお祈り申し上げます。
今回の事件は、当地の治安が非常に悪いということを、改めて思い知らされた 事件でもありました。このような事件が二度と起こらないよう、在留邦人と大使 館が一体となって、安全対策に取り組んで参りたいと考えております。
2.治安状況と一般的対策(警備対策官)
まず、モンゴルの治安悪化の社会的要因ですが、民主化以降、急速に広がる貧 富の格差、首都への人口の極端な集中、失業率の増加等が挙げられると思います。 その日の暮らしにも困っている人が多数存在しており、生活の糧を得るために犯 罪に走るということです。
モンゴル政府発表の犯罪統計によりますと、ここ数年は、犯罪発生件数は年々 減少しているとのことですが、我々が体感している治安状況とは大きなギャップ があると思っています。今年については、10月末現在の犯罪統計を調べたとこ ろ、総発生件数、強盗の発生件数ともに、前年比3%の増加とのことでした。
また、今夏、大統領恩赦で釈放された約1,800人の犯罪者が、再び犯罪を 起こしていることにも注意を払わねばなりません。
本年の邦人被害状況についてですが、強盗殺人1件、路上強盗2件、空き巣6 件、すり17件、置き引き9件等を大使館で認知しています。しかしながら、被 害にあっても警察に届出がされなかったり、大使館に連絡されない旅行者も少な くないと考えられますので、実際はもっと多くの方が被害に遭っていると思われ ます。
一般的な犯罪から身を守るためには、まず「日本人をはじめ外国人は、狙われ ている。」との認識を持ち、常に注意を怠らないことが重要です。
本年の邦人被害の状況を分析しますと、すり、置き引き等は主に昼間に発生、 路上強盗、暴行は夜間に集中しています。被害が多く報告されているのは、スフ バートル広場からサーカス周辺に至る市内中心部の繁華街、ナラントールなどの ザハ、観光地等、いわゆる人が大勢集まる場所に集中しています。
また、当地の犯罪の特徴として、飲酒に伴う犯罪発生が多いため、カラオケ、 バー等の利用時は特に注意が必要と思われます。
この様な犯罪からどの様に身を守るかですが、危険な時間帯や場所を避けるこ と、常に注意を怠らないよう行動することなどで、ある程度は防げると考えます。 また、タクシーの活用、多人数での行動等も効果があると思います。外務省ホ ームページの海外安全情報や大使館ホームページでポイントを詳しく紹介してい ますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。
最後に、先般メールでもお知らせしましたが、11月23日付けの警察庁から の注意喚起についてお知らせします。「ダヤル・モンゴル」、「フフ・モンゴル」等 の一部の過激な民族主義的団体・運動が活動を活発化させており、夜間のバーや パブ、カラオケ等において、外国人がモンゴル人異性に対し声をかける等の行為 を「モンゴル人を侮辱する行為」として監視を強めており、外国人に対する暴行 事件等に発展する可能性があるとのことです。したがって、上記の場所での行動 には、これまでにも増して注意する必要があります。
楽しいモンゴルでの生活は、我が身の安全あってこそです。安全は誰かから与 えられるものではなく、自分で確保するものであると認識していただきたいと思 います。お困りのこと等がありましたら、遠慮なく大使館までご相談ください。
3.国際テロ・犯罪に対する取組み等(日本大使館領事)
モンゴルにおける治安悪化のいくつかの事例をご紹介します。昨年モンゴルで は、約1,300人がアルコール中毒で死亡、1,611人が自殺していますが、 今年は倍増する見通しとの事です。
家畜を失い首都に流入した多くの牧民は、職もなくアルコールにおぼれ、一般 犯罪に走っている状況にあります。また、依然としてストリート・チルドレンの 問題や人身売買、薬物事犯等も発生しており、治安状況は確実に悪化しています。 モンゴルでは、外国人は一般的に金持ちと見られていますので、常に犯罪のタ ーゲットとなっている状況にあります。
「ダヤル・モンゴル」という過激な民族主義的団体については、若者を中心に 構成されており、外国人によるモンゴル人への淫行を「モンゴル人を侮辱する行 為」として監視しています。
この団体の一番目の対象は中国人、二番目は韓国人、三番目は日本人との情報 もあります。
安全上の注意点を以下のとおりご紹介しますので、参考としてください。
― 当地の文化、風習等を尊重し、礼儀正しく接すること。
― カメラ等の貴重品は、むき出しでなく、必ずバッグに入れて持ち歩くこと。
― 他人の目がある場所では財布を開けないこと。(小額の金額をポケットに入れて、支払等にはそれを用いるのも良い方法。)
― 徒歩での移動中は、後ろや周辺に不審者がいないかを時々確認すること。
― 自宅やホテルでは、貴重品はセーフティ・ボックス等の安全な場所に保管すること。
― 見ず知らずの者の来訪時は、むやみにドアを開けないこと。また、ホテルやアパートの鍵には、ホテル名や部屋番号の書いたタグを付けないこと。
― 外出する際は、必ず知人や同僚に外出先、同行者名、帰館(宅)予定時刻等を伝えておくこと。知人や同僚が不在の時は、メモに残しておくこと。
― 日本大使館等緊急連絡先の電話番号を携帯電話に登録し、常に持ち歩くこと。
― 移動中の病気や怪我に備え、氏名、国籍、血液型、緊急連絡先等を現地語及び日本語で書いたカードを常に身につけておくこと。
― 刃物等を持った強盗にあった場合は、身の安全を第一に考えること。
― 脅迫などを受けた場合は、安易に金銭での解決を図らないこと。一人で悩まずに、友人や会社、日本大使館などに相談してほしい。安易な金銭支払は、更なる要求を招く事になりかねない。
4.参加者意見交換
○ シニアボランティア殺害事件については、痛恨の極みです。JICAでは、この 事件以降2回に亘り隊員に対して状況説明や安全講習を行った他、個別面談、 心理アンケート、必要に応じて電話相談を実施する等の対策を取っています。
教訓として、家主のデータベース化、必要に応じて合鍵を預かる等の措置を 検討しています。
また、安全対策アドバイザーにより、隊員の住居防犯診断を行ったほか、住 居防犯対策の強化を実施中です。
他国のボランティア派遣組織(VSO、KOICA、APC)に調査を行ったところ、 各国の治安に対する認識等は、ウランバートルの治安状況は悪化している、ウ ランバートルの治安が悪化しているため地方での活動を中心としている、アパ ートを複数のボランティアで共有、モンゴル人宅へのホームスティ等の安全対 策を実施している、24:00時以降外出して事故等にあった場合には自己責 任としている、22:00時以降の外出を控えさせる等の対策を取っている、 とのことでした。
JICAとしても、この様な対策の実施を検討していきたいと考えています。 また、住居選定基準についても、より安全性を高めるものとなるよう変更し てまいりたいと考えております。
12月1日に、現地の警察官を招いて安全対策会議を開催する予定です
○ 既に3回もすりに合っています。日頃から、カバン等を前にかけるなどの細 かな防犯対策を心がけるべきだと思います。
○ ザハで3回、ポケットに手を入れられたことがあります。また、市内のホテ ルでいきなり前から見知らない人に殴られた上、倒れた時に何回も蹴られ怪我 をしました。
○ 強盗殺人の発生以降、警備を強化しています。以前、当社の社員2名が襲わ れたことがありますが、以降は発生していません。当社では、社員を会社のバ スで通勤させている等の安全対策を行っています。
○ 日本人会会員になっていない人の中には、安全に関する情報を何も知らない 人がいます。同会会員の拡大を図り、日本人社会全体の情報交換、注意喚起を 活性化させるべきだと思います。
○ 横断歩道を渡るのが困難です。交通における安全対策の強化を、日本大使館 から警察に強く要望していくべきだと思います。
○ 在留邦人に対し、犯罪被害に関するアンケートを取ってみてはいかがでしょ うか。防犯の専門家による住居診断などを日本人会から希望者に提供すること も可能かと思います。
○ 住居安全チェックリストをJICAから提供してもらい、それを日本人会会員に 情報提供したいと思います。
5.総括(市橋大使)
モンゴルは基本的には親日国ですが、当館館員が某大学でモンゴル人学生と意 見交換した際、「なぜ日本はモンゴルをここまで援助するのか。」「自分たちの国 (日本)に資源がないから、それを狙っているのだろう。」といった懐疑的な意 見も寄せられたことがあります。このように、一部の若い年齢層には、日本に対 する警戒心を持っている者もおり、全てのモンゴル国民が親日的とは考えてはい けないという事だと思います。
「ダヤル・モンゴル」等の過激な団体のメンバーも若年層が中心ですが、例え ばヨーロッパのナショナリスト団体のスキンヘッドのように、一見して危険な印 象を与える等が「ダヤル・モンゴル」のメンバーにはありません。この様な思想 を持った若者がいるという事実は、モンゴルに滞在している邦人は分かるかもし れませんが、一般の旅行者は全く分からないと思います。
大使館としては、今後も積極的な情報提供等により、邦人の皆様の安全確保に 尽力してまいりたいと考えております。